人種・民族間の差別・偏見の解消に向けて
私たち人間は、すべて、人間であることそれ自体において、侵すことのできない尊厳と価値を持っている。
それゆえ、私たち人間の間では、いかなる差別も偏見も許されないはずである。なぜ、差別や偏見が許されないのか、いまここで、次のような視点からアプローチしてみることも必要であろう。
私たちは、生まれるときに、どの人種、どの民族に生まれるかを、あたりまえのことであるが、自ら選ぶことはできない。私たちは、生まれた後、やがていくつか年齢を重ねてから、自分が属する人種・民族を意識するのである。
つまり、自らが属する人種や民族は、私たちの選ぶことのできないものとして、それゆえ、好むと好まざるとにかかわらず、他律的に運命として与えられるものである。
人種・民族というものが、そのように、自己の選ぶことのできないものとして、したがって自己の責任の及ばないところで他律的に運命として与えられるものだという事実だけからしても、そのことが、なんらかの差別や偏見の根拠になってはならないことは明白である。
しかるに、現代社会には、人がどの人種、どの民族に生まれ、属しているかという、ただただそれだけの理由からの差別や偏見がいまなお随所にみられる。
これこそ、まさに、「いわれのない差別・偏見」と言わざるをえないだろう。